『ブラタケシ #43』於西新宿ナビカフェ
気まぐれライヴレポ。
さわひろ子さんを観に、西新宿ナビカフェへ行ってきました。
世古武志さんの月例2マン企画『ブラタケシ』の43回目。
世古武志さんについては、『仏ソングをうたうひと』という前情報は伺っていたのですが、「仏ソング・・・とは?」と思っていました。とりあえず謎すぎるので、ここはそのまま飛び込んでみよう!と予習はせずに向かいました。
先手は件の世古武志さん。
1曲目にさわひろ子さんの”なないろ”をカヴァー。すごく声がよくて、さわさんが広げる色彩豊かな情景に、更に光を加えたような快晴の世界が広がりました。
2曲目からは世古さんのオリジナルが始まるのですが、
なるほど。
ひたすらお寺の名前や、仏様の名前を羅列していく曲が続きます。ただし、幅広いジャンルに当てはめながら、整った美声でうたわれるのでそれは確かに音楽でありました。
ネタ感が強い枠ともいえますが、本当にほぼ羅列だけで進むそのスタイルはSSWとは一線を画しているように思います。芸人というのも少し違う・・・。
そう。音楽家、と表すのがいちばんしっくり来るように感じました。
と、思っていたら中盤で披露された、はるか昔に作ったというオリジナル曲”平凡”は、静かにやさしく”諦観”を促すメッセージが込められていました。
更に続けて、尾崎豊をカヴァーする『今月の尾崎』というコーナーが始まり、尾崎豊へのリスペクトも語られました。
をを、わりとガチのSSWのひとだ・・・。
今回は尾崎の初期曲”ダンスホール”(”I LOVE YOU"のシングルのc/wだったよね!持ってた!!)をうたわれたのですが、これがまたすごく丁寧で。
尾崎豊への深い敬意をここでもう一度感じるとともに、先程の”平凡”というオリジナルは、尾崎~仏ソングへの大々的な飛躍を、説明して繋ぐ蝶番であったように感じました。
そしてカヴァーを披露する流れになったところで、「謝ることがある」と前振りをしてもう一度さわひろ子さんの”なないろ”を、歌詞を変えて歌われました。東寺講堂の立体曼荼羅についての歌になっていたのですが、世古さん曰く「名詞の羅列や使われている単語など、仏ソングとの共通点が多かったので『これは!』と思った(超訳)」
なるほど納得の完成度でした。客席のさわさんもにっこにこ。
お客さんとのコール&レスポンスも密やかに、4月8日に控える毎年恒例の
『バースデーワンマンライヴ(釈迦の)』
と、東京国立博物館で開催中の
のプロモーションを全編に散りばめた1時間のステージが終了しました。
そして後手、さわひろ子さん。本日のパートナーはピアノの伊藤詩織さんです。
この『ブラタケシ』の縛りとして、『お互いの曲をカヴァーする』というのがあるそうで、曲間を『おはなし』で繋いでライヴを展開するさわさんとしては、「世古さんの曲をどう織り込めば・・・」と悩みに悩んだとのこと。
そして、「さっき出来ました」と驚愕の告白。その後に始まったのは、
というおはなしでした。母方の祖母が浄土真宗、父方の祖父が敬虔なクリスチャンで、中高一貫のカトリック女子校から、京都にある浄土真宗を学ぶ『龍の谷の大学』に進学した”わたし”の物語。
文章から曲への連接に唸らせられるのが、さわさんのライヴの特徴なのですが、今回は聴き手もカナリ頭を使う展開になっていました。
カトリック女子校での生活の辺りのシークエンスはシリアスで、抱きやすい幻想も包み込んでかつ、どこかシビアなさわさんの世界を踏襲していました(個人的に”かくれんぼ”は、『秘密の花園』感があって素敵なシチュエーションでした)。
が。
『龍の谷の大学』に進学した・・・というところで”dragon"が始まったときは、思わず笑いを噛み殺してしまった・・・。
だからといって破綻することはなく、流れるようにおはなしが進んでいきます。
イエスさんと親鸞さんの教えに、共通点を見出した”わたし”は、「このふたりも恋に身を焦がしたこともあったのでしょうか」と夢想し、”からたち”が始まります。さわさんの曲の中でもグロテスクに情念を歌っていると思うのですが、それでも爽やかな印象があるのは、勿論さわさんのキャラクターと、それから『他者への視線』が欠かさずあることではないか・・・と改めて思いました。
これについては、また項を改めて語れればと思っています。
世古さんのカヴァー”寺でした”は、大学入学後に車で牛久大仏を観に小旅行する・・・という展開で披露されました。流石。
さわさんのステージも1時間。悩みに悩んだおはなしは、「ベスト盤じゃん!!」と思う程、曲をたんまり取り込んだ大満足の内容でした。
そして再び世古さんがステージに戻り、3人で仏ソングをセッション。客席もハンズクラップで参加します。仏様の名前を呼んで呼んで呼びまくり、すっかり軽やかな気持ちになりました。